猫は古代から現代に至るまで、世界中の文化において特別な存在として扱われてきました。その神秘的な性格と美しい外見から、猫は「神」として崇められることもあれば、「悪魔」として恐れられることもありました。今回は、世界各地に伝わる猫にまつわる興味深い言い伝えと迷信について詳しく探っていきましょう。
古代文明における猫の神格化
古代エジプトでは、猫は最も神聖な動物として崇拝されていました1。猫は「神」や「豊穣のシンボル」として人々から敬われ、猫を殺した人は死刑に処せられ、猫が死んだ際には眉毛を剃って喪に服したほどでした1。古代エジプト人は聖獣として崇拝していた猫の国外持ち出しを厳禁していましたが、抜け目のないフェニキアの商人が猫を密輸して暴利をむさぼることを企て、こうして猫たちは小アジアを経てヨーロッパへと持ち込まれました3。
古代ギリシャ人はエジプトの猫に恋をし、自分の猫を飼うために数組の猫を盗みました2。興味深いことに、『イソップ物語』や『聖書』をはじめ、ギリシア、ローマの古典に猫の記述が全くないことから、もともとヨーロッパに飼猫がいなかったことが分かります3。
日本における猫の吉兆信仰
日本では、2004年に発行された「新猫種大図鑑」によると、猫が日本に伝わったのは999年の5月10日で、中国の高官が一条天皇に真っ白なメス猫を献上した日だとされています1。その直後に5匹の子猫が京都御所で生まれ、日本では猫は「吉兆」の動物というイメージが定着しました1。現在でも「招き猫」に代表されるように、猫は幸運のシンボルとして親しまれています1。
イスラム文化圏での猫への愛情
古代ペルシャでは、ライオンのくしゃみから猫が生まれたという美しい伝説があります1。イスラムの預言者マホメットは大の猫好きで有名で、ある日の終わりに愛猫が自分の長い袖の上で寝ているのを見て、愛する猫を起こさないように袖を切り落としたというエピソードが残っています1。このような猫への愛情から、今でもどのモスクでも猫は出入り自由となっているそうです1。
仏教における猫の複雑な位置づけ
仏教では猫に対して複雑な見方があります。ブッダが亡くなった時、すべての動物は遺体を囲んで泣いたのに、猫と蛇だけは泣かなかったという伝説が残されています1。しかし一方で、中国の初期の仏教では猫の静かな態度に敬意を払い、暗闇でも目が見えることで悪霊を祓うことができる動物として大切にされました1。
インドでは、豊饒の女神サシュティは猫の顔で描かれることがよくあり、この結びつきを称えるために、職人たちはランプとして、またげっ歯類の侵入を防ぐために使用される猫の像を彫刻しました2。仏教徒は猫の瞑想的な性質が悪霊を遠ざけるのに役立つと信じて、猫を高く評価しています2。
タイでは、ロイヤル・ファミリーのメンバーが埋葬されるときは猫が一緒に埋葬される慣例があり、1920年までは新国王の戴冠式の行列に猫も加えられていました1。
ヨーロッパにおける猫評価の劇的な変遷
ヨーロッパに渡った猫は、当初はネズミなどの害獣を退治する貴重な動物として丁重に扱われました3。猫を殺した者は、その大きさに応じた量の小麦を代償として差し出さなければならなかったほどです3。猫は次第にヨーロッパの様々な文化の中に浸透していき、猫にまつわる多くの迷信や習慣が生まれました3。
しかし、15世紀終わり頃から猫の受難の時代が始まります3。古代エジプトで猫が神聖視されたまさにその理由──刻々形を変える瞳と静電気を放つ毛を持ち、歩くときも音を立てず、夜は目を光らせて闇の中を行く──それを「魔性」、「魔女」と結び付けるのは容易なことでした3。
15世紀、法王イノセント8世は、カソリック教会の権威と利益を守るために、邪教や偶像崇拝を排除せんと「魔女狩り」を押し進めました3。「魔女」の随伴者、「悪魔」のシンボルとされた猫も、そのとばっちりを受けることとなり、猫ばかりか、それを飼う人、かくまう人までもが、水責め、火あぶりに処せられました3。
黒猫にまつわる特別な迷信
イギリスでは黒猫は縁起が良い動物とされ、黒猫が人間の前を横切ると幸運が訪れるという迷信がありました1。しかしその理由は興味深く、黒猫は悪魔と手を結んでいると考えられており、その悪魔の使いの黒猫が人を傷つけることなく通り過ぎたからだという理由からでした1。
中世ヨーロッパでは、黒猫を魔女の使いと考える迷信が広まりました6。魔女裁判では「猫を飼っている」というのはその人が魔女本人かあるいは悪魔崇拝者であることの重要な証拠とされ、判決では魔女・悪魔崇拝者と猫は共に焼き殺されました5。
ハンガリーでは、猫が生まれたときは皮膚に十字の彫り込みをしないと7歳から12歳の間に猫が魔女に変身するという迷信まであったそうです1。

ロシアにおける猫の幸運信仰
ロシアでは、猫は何世紀にもわたって幸運をもたらすと信じられてきました2。所有したり、新居に引っ越した際に手に入れたりすると幸運が訪れると言われています2。エリザベス皇后の治世以来、猫はエルミタージュ美術館と冬宮殿を守ってきており、タタールスタンのカザン市は、宮殿のげっ歯類問題を制御するために、彼女に最高のネズミ捕り者を紹介したという歴史もあります2。
猫の復権と現代への影響
この受難の時代に終止符を打たせたのは、皮肉にもドブネズミでした3。東方から侵入したドブネズミは、またたく間に土着のクマネズミを駆逐し、この機動力溢れる侵入者と相対し人間を助けたのは忌み嫌われたはずの猫でした3。変わり身の早い人間は、ネズミ捕りの上手な猫を高値で売買するようになりました3。
さらに19世紀に入り、パスツールが多くの病気の原因が細菌であり、不潔さが直接病気と結びつくことを証明してからというもの、これまで平気で触れていた犬や馬を敬遠し、清潔を旨とする猫だけに門戸を開くようになりました3。こうして猫はネズミの退治役ばかりでなく、共に家で暮らし、その美しい姿を愛でる対象としての地位を与えられるようになったのです3。
現代における猫モチーフの意味
現代では、猫モチーフは幸運を引き寄せる、魔除け、繁栄、知恵と洞察力、独立心と自由、癒しと安らぎなど、多様な意味を持つとされています4。猫は幸運の象徴として、多くの文化や伝承では、猫の姿が現れることで幸運が訪れると信じられています4。また、古来から倉庫や家から害虫を退治して守っていたことから、悪いものを遠ざける魔除けを意味する動物の一つとされています4。
まとめ
猫にまつわる世界の言い伝えと迷信を見ると、同じ動物でありながら文化や時代によって「神」から「悪魔」まで、これほど両極端にイメージをもたれる動物は珍しいことが分かります1。猫のミステリアスな性格が、人々の想像力を刺激し、様々な伝説や迷信を生み出してきました。
大昔のヨーロッパではハロウィーンや復活祭の時に猫を火あぶりにして捧げることもありましたが1、今では世界中で愛されている猫は、悲しい歴史を乗り越えて現在の地位を築いたのです1。これらの豊かな文化的背景を知ることで、私たちは猫との関係をより深く理解し、大切にしていくことができるでしょう。
引用:
- https://www.necoichi.co.jp/Blog/detail/id=4724
- https://www.zezelife.com/ja/cat-representations-in-different-cultures-around-the-world/
- http://www.necozanmai.com/zatsugaku/cats-europe.html
- https://vespertine.jp/?blog=neko-motif
- https://note.com/tamam010yuhei/n/nca463134f06b
- https://nekoneko.challe.blog/%E9%BB%92%E7%8C%AB%E3%81%AE%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E3%81%A8%E6%96%87%E5%8C%96%EF%BC%9A%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%B8%AD%E3%81%AE%E9%BB%92%E7%8C%AB%E4%BC%9D%E8%AA%AC/
- https://www.youtube.com/watch?v=jOgpx7qwgM0
- https://nekomoyo.website/worldcat/
- https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8D%E3%82%B3%E3%81%AE%E6%96%87%E5%8C%96
- https://neko-222.jp/blog/a-myth-and-legend-concerning-the-cat/

